バングラデシュのニュース(2012/12/28) その2

■バングラデシュ成長加速 ~ 資本流入で一段の成長加速へ ~
 http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/fujii/pdf/6520.pdf
 (日本総研 2012年12月26日)

(1)今春来、バングラデシュが成長加速。まず、信用動向を民間と政府に分けてみる
と、政府セクターが昨年末から頭打ちとなるなか、民間セクターでは、2010年入り後の
ハイペースの増勢が持続(図表1)。やや子細に前年差を辿ると、2009年末から増勢が
急ピッチで加速した後、昨春以降、ほぼ月を追って増勢鈍化したものの、本年4月をボト
ムとして、5月以降、再び増勢加速。低成長や政治的混乱に加えて、不動産登記や所得証
明など制度整備の遅れに阻害され、長らく低調だった金融取引が近年、急拡大。

(2)速報性を備えた第2の景気指標として税収動向に季節調整を施してみると、税収
全体では6月から8月まで減少した後、9月から力強い増勢(図表2)。主要税目別では、
まず所得税が昨年末から一進一退で推移していたものの、9月から大幅増。個人の所得環
境の一段の改善、企業業績のさらなる向上を示唆。次いで付加価値税は5月をピークに8
月まで減少した後、9月から増勢復帰。

(3)発電量も成長ペース加速を示す動き。主要業種別に生産動向をみると成長加速の
原動力は、まず金属製品、次いで食料品、機械機器(図表3)。従来、同国経済を牽引
してきた繊維や紙パルプに加えて、金属製品や機械機器など、高付加価値セクターの台
頭が本格化。産業の高度化が進行。

(4)産業高度化は外資参入が重要なトリガー。そこで資本の流出入をみると、まず直
接投資が7~9月大幅増(図表4)。従来の140億タカ前後から324億タカへ倍増。一方、
証券投資では、期毎の変化が大きいものの、趨勢的にみれば昨春以降、増勢。資本流入
の拡大で設備投資を起爆剤に新年の同国経済は一段の成長加速が視野。

■バングラデシュの内臓型リーシュマニア症研究拠点の設立を全面的に支援
 http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20121221.html
 (東京大学病院 2012年12月21日)

 ―「顧みられない熱帯病」の撲滅に向けた取り組み―

内臓型リーシュマニア症は、節足動物サシチョウバエの媒介による感染症で、世界中に
分布し、2 億人が感染の危険に晒されています。特にインド、ネパール、バングラデシュ
に跨がる地域に高度に蔓延しており、貧困で恵まれない暮らしの人々が脅かされていま
す。この内臓型リーシュマニア症を撲滅するためには、臨床及び環境衛生面からの複数
国間の同時進行的アプローチが必要です。

今回、東京大学医学部附属病院 血液浄化療法部の野入英世准教授、同大学院農学生命科
学研究科 応用動物科学専攻の松本芳嗣教授らは、同大学院医学系研究科 国際保健学専
攻とともに、独立行政法人科学技術振興機構(JST)/独立行政法人国際協力機構(JICA)
による地球規模課題対応国際科学技術協力事業を通じて、icddr,b、DNDiと連携し、バン
グラデシュ政府が12 月2 日に同国マイメンシンに内臓型リーシュマニア症研究拠点Sur
ya Kanta Kala-azar Research Center(SKKRC)を設立するにあたり、当初より全面的に支
援を行いました。この研究拠点では、内臓型リーシュマニア症が蔓延する地域における
臨床・研究を充実させ、日本発の臨床診断技術や感染を媒介する昆虫の発生などをコン
トロールする技術等を投入します。今後も、世界保健機構が示した内臓型リーシュマニ
ア症の撲滅ための取り組みに協力していきます。

※ 詳細は添付のリリース文書をご覧下さい。
 http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20121221.pdf

■バングラデシュ「BOP/ボリュームゾーンビジネス」ミッション
 http://www.jetro.go.jp/events/mission/20121213641-event
 (JETRO 2013年2月23日(土曜)~2月28日(木曜))

ジェトロは、BOP層(Base of the Economic Pyramid)および購買意欲旺盛なボリューム
ゾーンの消費者をターゲットにしたわが国企業によるビジネスを促進するため、バング
ラデシュにミッションを派遣します。本ミッションでは、BOP層・中間層・富裕層向け小
売流通市場の視察、都市や農村におけるBOP層や中間層の生活環境視察、現地企業訪問な
どを通じ、消費財の価格・ターゲット・流通構造など、バングラデシュにおけるビジネ
スプランの策定に必要な情報収集を行います。

BOPビジネス分野で注目を集めるバングラデシュは、約1億5,000万人という人口規模や堅
調な経済成長などを背景として、また中間層の拡大や富裕層の登場も手伝って国内市場
が活況を呈しており、それにつれて内需に期待する企業活動が活発化しています。皆様
の本ミッションへのご参加を、心よりお待ちしています。

日時:2013年2月23日(土曜)~2月28日(木曜)
派遣国・都市 :バングラデシュ(ダッカ、タンガイル等)
形式 :つぎの(A)(B)いずれか
   (A)成田空港集合・解散
   (B)ダッカ(現地ホテル)集合解散
主催(ミッション企画) :ジェトロ
旅行企画・実施 :(株)JTB法人東京

募集対象
次の条件を満たす方
1.バングラデシュにおけるBOP/ボリュームゾーンビジネスに関心を持つ日本企業に所属
する方
2.全行程参加可能な方

定員
25名様(最少催行人員10名様)

参加旅行代金(1人あたり)
一般参加旅行代金 (1名様1室利用)
(A)成田空港集合解散(エコノミークラス、燃油サーチャージ・空港諸税を含む)
 179,770円
 ※ビジネスクラス追加代金:+222,000円
(B)ダッカ(現地ホテル)集合解散
 76,000円
※ジェトロ・メンバーズ会員企業様は10%割引。ただし、他のジェトロ主催の2012年度
事業割引額と合わせて、払い済み2012年度年会費を割引額の上限とします。
※上記(B)の旅行代金には、現地までの往復航空券、商用査証(ビザ)取得費用等は含
まれません。各自手配をお願いいたします。(株)JTB法人東京でも手配承ります。別途
お問い合わせください。
※詳細は添付の「バングラデシュBOP/ボリュームゾーンビジネス・ミッションのご案内」
をご確認ください。

お申し込み方法
次の1~3の手順にそってお申し込みください。
1.添付の「バングラデシュBOP/ボリュームゾーンビジネス・ミッションのご案内」をご
確認・ご了承の上、必要事項を記入した参加申込書を(株)JTB法人東京(FAX:03-590
9-8241、またはE-mail:g_sakamoto845@bwt.jtb.jp)まで送付してください。
 ※参加申込書は、1名につき1枚ご記入ください。
2.(株)JTB法人東京まで着信確認の電話(Tel:03-5909-8119)をお願いいたします。

3.申込書到着確認後、(株)JTB法人東京から参加申込金50,000円の請求書(旅行代金
の一部として収受します)をお送りしますので、申込金をお振込みください。
申込金の着金をもって申込完了となります。
※ご提出いただいた書類に不備がありますと、受付完了となりませんのでご留意くださ
い。
※旅行代金の残金は、2013年2月1日(金曜)までにお振込ください。

お申し込み締め切り
2013年1月23日(水曜)

■スマイル作戦バングラデシュ 活動報告
 http://mdm.or.jp/news/release/48321gonoshasthaya_kendra_univ_hospitalgk86_gkgk326_501150113_gk_70.html
 (世界の医療団 2012年12月19日)

バングラデシュでのスマイル作戦が始まって4年、今回で8回目となるミッションを行っ
た。世界の医療団からは形成外科医4名、麻酔科医3名、看護師2名、コーディネーター
1名のメンバーで編成され、現地パートナー:Gonoshasthaya Kendra Univ. Hospital(
以下GK大学病院)とともに8日間(手術6日間)活動した。

これまで首都ダッカでのみスマイル作戦を行ってきたが、バングラデシュ南部でもニー
ズがあることが分かり、今回、GK大学病院の関連施設であるGKコックスバザール病院で
のパイロットミッションを行うこととなった。ミッション期間のうち3日間はチームを2
つに分けて、6名のメンバーで南部に向かった。

コックスバザールへはダッカからの国内線で約50分。若干湿度の高さを感じたが11月で
あったため暑すぎることはなく活動はしやすかった。病院に着くとスタッフが歓迎して
くれ、診察室の外は50名を超える患者であふれていた。口唇裂の子ども、火傷を負った
男の子、子を抱く母親、みな順番が来るまで辛抱強く手術へのチャンスを待っていた。
パイロットミッションであったため手術症例は慎重に選別され、翌日から1日半かけて合
計13件の手術が行われた。

火傷後の瘢痕で指がまっすぐに伸ばせない男の子、今回の手術でかなり伸展が可能にな
ったがこう縮が強かったためもう一度手術が必要と医師は言う。瞼に腫瘤のあった女の
子は術後瞬きしても視界を遮るものはなくなり、足の甲にのう胞があった男性はサンダ
ルを履いても引っかからないようになった。それぞれ小さな手術ではあったが、本人に
とっては大きな不便となっていたため、手術を受けられた喜びと私たちへの感謝を表し
て帰っていった。首都ダッカとは違い周辺に外科手術が可能な病院は少なく彼らのよう
な症例は手術の機会を得られない場合もあるため、この地域におけるスマイル作戦のニ
ーズを改めて実感した。

一方GK大学病院でも例年通り手術を行った。全身に火傷を負った男の子、今回は左腕の
手術であったが過去に何回か手術を受けていたため患部へ移植できる皮膚が極めて少な
かった。今後は右腕の手術も必要で、その時のことを考慮して最小限の採皮(移植する
皮膚を採ること)で手術を行った。その場限りでない患者の将来を考えた治療をすべく
みな経験と知識を凝らしている。

また、形成外科への認識を広めるため世界の医療団の形成外科医が講義を行った。約70
名の医学生を対象に、今回は「形成外科とは何か」という総論であった。発展途上国で
は生命の危機に直結しない診療分野は未発達なため形成外科は後回しになってきた。彼
らが形成外科に興味を持つことから始まり、知識や技術を深め、将来は自分達で自国の
患者を手術できる、今回の講義はそのための一歩であった。

バングラデシュでのミッションは来年も継続され、すでに多くの患者が予定されている。

ダッカ:診察108名 / 手術47件
(全身麻酔27件 / ブロック9件 / 局所麻酔11件)

コックスバザール:診察55名 / 手術13件
(全身麻酔2件 / ブロック1件 / 局所麻酔10件)

看護師 石原 恵

■草の根・人間の安全保障無償資金協力 署名式
 -「ナチョール郡・タノール郡零細農家のための農業機材整備計画」
   及び「ウジルプール郡零細農家のための農業機材整備計画」-
 http://www.bd.emb-japan.go.jp/jp/gghsp/20121219pr.html
 (在バングラデシュ日本大使館 2012年12月19日)

2012年12月19日、バングラデシュ人民共和国の首都ダッカ市の日本大使館において、草
の根・人間の安全保障無償資金協力に関する贈与契約の署名式が行われました。佐渡島
志郎駐バングラデシュ特命全権大使は、当地NGOである「持続的な農業と社会経済開発団」
代表と123,338米ドルを限度とする「ナチョール郡・タノール郡零細農家のための農業機
材整備計画」に関する贈与契約を結び、同じく当地NGOである「社会開発奉仕団」代表と
102,848米ドルを限度とする「ウジルプール郡零細農家のための農業機材整備計画」に関
する贈与契約を結びました。両協力は、被供与団体が活動しているそれぞれの地域にお
いて農業機械を整備し、低価格で貧困農家に貸し出すことで対象地域の農業を支援する
ものです。

持続的な農業と社会経済開発団は、2001年以降バングラデシュ西部を中心に、貧困層を
対象とした農業支援、教育、女性支援、公衆衛生、保健等の支援活動を展開してきまし
た。今般協力の対象地であるチャパイノブゴンジ県ナチョール郡及びラッシャヒ県タノ
ール郡では農業に関する技術指導を行なってきました。同地では、住民の多くが零細農
家であるが、農業機械を所有している農家はおらず、生産性は極めて低い状況にありま
す。一部農家は大農家の所有する農業機械を借りることもあるものの、必要なタイミン
グで借りられない上、賃借料は高額です。農家は、必要なタイミングでの水の供給、作
業日数の短縮化を通じ、生産コストの低減及び生産性の向上を図るため、農業機械の導
入を望んでいました。

他方、社会開発奉仕団は、1987年以降バングラデシュ35県10,500村にて、貧困層を対象
に農業支援、教育、女性支援、公衆衛生、保健、緊急支援等様々な支援活動に従事して
きました。今般協力の案件地であるボリシャル県ウジルプール郡においては、貧困者の
支援活動及び農村開発を展開してきました。持続的な農業と社会経済開発団の案件地同
様、同地の住民の多くは零細農家です。同地でも機材の非所有及び賃借の不便さから農
業は主に人力による耕作であり、作業効率が悪く、生産コストも決して低いものではな
く、極めて非効率な状況にあります。また、気候的には3期作が可能な地域であるが、近
年の気候の変化の影響及び作付け作物の価格と生産コストのバランスから2期作しか行え
ていません。同地でも農家は農業機械の導入を望んできました。

両プロジェクトはそれぞれの当該地域において農業機械を整備し、零細農家にも支払い
可能な価格で貸し出すことで零細農家の農業生産の効率化、農業収入の向上を目指しま
す。また、プロジェクトの運営・維持管理費、耐用年数満了後の機材の更新のための費
用については同賃借料で全て賄う計画であり、プロジェクトの持続可能性を助長します。
対象地域の農業生産の効率化による農業収入の向上を目指す両計画は、バングラデシュ
の貧困層の85% が居住する農村部の貧困削減に貢献することが見込まれます。

■バングラデシュにおける工場火災から学ぶこと――下田屋毅の欧州CSR最前線(20)
 http://www.alterna.co.jp/10297
 (Alterna 2012年12月22日)

11月24日夜、バングラデシュ首都のダッカ近郊の衣料品工場で火災が発生。少なくとも
112人が死亡、200人以上が重軽傷を負うという同国史上最悪という痛ましい災害が発生
した。これは夜勤中の火災でその当時、従業員約2千人が働いていた。

出火場所は9階建ての工場1階部分の倉庫で発生。工場の出口には労働者が脱走しない
ように鍵がかけられていたとの証言があり、窓ガラスを割って脱出した人や、上層階か
らは窓から飛び降りるなどして死亡者も出た。

従業員のほとんどは女性。バングラデシュ政府は火災の原因を放火の疑いがあるとして
捜査を続けている。バングラデシュの多くの工場では、防災設備や労働環境の不備が以
前から指摘されており、約5年前から工場の火災で累計500人以上の方々が亡くなってい
る。

◆ ウォルマートは契約を打ち切り

バングラデシュでは衣料品・縫製品産業が主要産業で、輸出全体の80%が繊維製品であ
る。輸出額は中国に次いで現在世界2位。人件費は世界最低水準であるため、多くのア
パレルメーカーが現地企業に生産を依頼している。

今回の火災を起こした工場の所有者は、ツバグループ傘下のタズリーン・ファッション
ズ社。火災当時、オランダのシー&エー社、香港のリー&ファン社をはじめ、様々なブ
ランドの衣料品を製造していた。

米国のスーパーマーケットチェーンであるウォールマートは、当初この工場と関係性が
ないとしていたが、サプライヤーが無断でこの会社に下請けとして発注していたことが
発覚。ウォールマートは、このサプライヤーとの契約を打ち切ったという。

ウォールマートは2011年、防火対策の専門家が、同社のサプライチェーン内のバングラ
デシュの工場を視察、バングラデシュの火災発生時の安全対策において、危険が非常に
高い工場に対して警告し、49の工場との取引を停止していた。

2011年2月には、他ブランドや販売店と協働でサプライヤー160社の参加の下、サプライ
チェーンミーティングを開催、防火対策について協議。また、防火訓練用ビデオや訓練
物資をバングラデシュの工場に提供し始めていた。このようにウォールマートはバング
ラデシュの工場の防火対策に既に疑問視し、対策に取り組んでいたという。

◆ 日本企業が学ぶべきこと

この災害を対岸の火事とせず、学ぶべきこととしては以下が考えられる。

1)行動規範・倫理規程の再確認
多くの製造会社は、サプライヤーに「行動規範」や「倫理規程」などを提示、サプライ
ヤーの工場労働者の労働環境・状態を管理・監督する措置を取っている。今回の火災を
踏まえ、欧米企業の「サプライヤー行動規範」を確認してみたが、防火についての記載
がない企業が散見された。

自社のサプライヤー行動規範に防火に関する記述があるか、今一度確認してみてはいか
がだろうか。また、ウォールマートの例からも、これらの行動規範・倫理規程が、自社
のサプライチェーンの中でしっかりと機能しているか確認する必要性があると思われる。

2)工場の労働環境改善
バングラデシュに限らず新興国・発展途上国の工場は、防火対策や安全衛生対策におい
て不備があり危険性が高いと考えられる。

工場を視察し、このような危険性の高い工場に対しては警告、改善が見られない場合、
取引停止をすることはリスクマネジメント上必要なことである。しかし、警告を発する
とともに、さらに一歩踏み込んで防火対策や安全衛生対策について協議の場を設け、工
場の安全衛生管理レベルの底上げにも貢献できると良い。

スウェーデンのアパレルメーカーであるH&Mは、「バングラデシュ開発プラン」を社内に
設けている。同社は、バングラデシュの衣料品工場労働者の安全衛生水準の向上や職場
改善に努めており、その中で衣料品工場の防火対策の不備を認識していた。他18社とと
もに2011年から防火対策を含む教育フィルムプログラムを開始。2013年までにバングラ
デシュの政府やサプライヤーとともにバングラデシュの約4500の工場、約300万人にプロ
グラムを提供する予定だという。

同社は他メーカーとともに2010年バングラデシュの工場労働者の最低賃金の改善につい
てもイニシアチブを取って政府と交渉している。また、この開発プランには、工場労働
者に対する暴力や差別に関する「ヘルプライン」の設置、「健康管理改善」、「職業訓
練校の運営(他企業との協働)」や、学生に対する「奨学金制度(グラミン銀行との協
働)」が含まれている。

このようにバングラデシュの低労働賃金を活用・搾取する構造としておくのではなく、
サプライヤー工場労働者・コミュニティのエンゲージメントを実施、彼らがどのように
したら幸せに、そして持続可能な形で働くことができるのかにも配慮している。

他にこの工場火災から学ぶこととして、初期消火活動や非難訓練を含む火災訓練の必要
性がある。消火器、消火栓の場所の確認、また定期点検や、使用方法についても工場労
働者と実施しておく必要がある。

一般的に工場の夜勤は、昼勤の場合と違い、安全衛生責任者の管理・監督が手薄になり
がちである。夜勤時の火災・労働災害についての対応をしっかりと協議し、訓練してお
く必要がある。サプライチェーン管理とともに自社工場における管理体制についても再
確認されてはいかがだろうか。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

■安い衣料品のためにバングラデシュの工場が払う犠牲
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36800
 (JBPRESS 2012年12月19日)

米小売大手ウォルマートの最高経営責任者(CEO)、マイク・デューク氏が先週、ニュー
ヨークで企業の責任について話す準備をしていた頃、会場の外に集まった人々からはこ
れに反発する声が上がっていた。

先月のバングラデシュの工場火災で死者が出たことを考えれば、ウォルマートのCEOに企
業の責任を語る資格はない、というのだ。

<100人以上の死者を出した工場火災>
 首都ダッカの郊外にあるタズリーン工場で発生したこの火災では、少なくとも117人が
亡くなった。ウォルマートの承認を得ていなかったものの、ウォルマートで売られる衣
料品を製造していた工場だった。

 同社に対する抗議行動の呼びかけ人の1人、メリザ・シルバファレル氏は「あの人たち
はこういう工場の安全性向上を容易に支援できたのに、あえてそれをしなかった」と述
べた。

 ほかの多国籍企業に製品を供給する工場で死亡事故が起きた時――2010年の火災や20
05年の建屋倒壊――と同様に、11月の悲劇の発生を受けてウォルマートは安全性の確保
にさらに努めると誓った。小売大手シアーズの製品もこのタズリーン工場で作られてい
たため(同社はそのことを知らなかったようだが)、シアーズも同様に対策を講じるこ
とを約束した。

 しかし労働運動の活動家たちは、以前の例ではいつも通りの業務があっという間に再
開されたと指摘している。

 新たな災害の発生を回避するには安全確保のために多額の投資が必要になるが、企業
側は株主の利益を増やしながら従業員の労働環境を改善し、なおかつ欧米の企業に安価
な衣料品を供給しなければならないというプレッシャーにさらされている。

<バングラデシュ政府にも責任>
ほかの複数の業界筋からは、多国籍企業もいい加減だが、バングラデシュ政府も彼らを
甘やかしており、政府は国内製造業者の安全基準引き上げを指導する責任を負わなけれ
ばならないとの指摘も出ている。

 バングラデシュ当局は今週、タズリーン工場の火災は破壊行為によるものだと結論づ
けた。だがその中間報告書には、工場のオーナーを過失致死の疑いで刑事告発すべきだ
とも書かれている。

<中国からの生産移転で急成長した繊維産業>
 世界最大の衣料品生産国である中国での人件費上昇を背景に、バングラデシュでは繊
維産業が形成されてきた。中国より低コストなこの南アジアの国に多国籍企業が注文を
振り向けるようになり、工場が大慌てで拡張されてきた。

 おかげでバングラデシュは世界第2位の規模を誇る衣料品生産国になっており、今年6
月までの12カ月間における衣料品輸出額は190億ドルに達している。

 しかし国内に5400ある縫製工場の多くではまだ、基本的な安全対策すら講じられてい
ない。可燃性の高い織物が廊下に置かれていたり、窓に格子がはまっていたり、盗難防
止のためにドアにカギがかかっていたり、電気の配線が粗雑で漏電による火災が起こり
やすかったりする。

 バングラデシュ政府は2年前に、2ケタのインフレに触発された暴力的な抗議行動への
対応として最低賃金を引き上げたものの、自国の縫製工場で働く360万人の賃金はいまだ
に世界有数の低水準だ。

 一方、米国と欧州の経済危機の影響で消費者は所得を減らしており、ディスカウント
チェーンや「ファストファッション」の店で売られる安価な衣料品への需要は増えてい
る。

 例えばスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は、バングラデシュから
の製品調達を年30億ドルに倍増させる計画を立てている。

<安価な製品の調達と労働者の権利>

 米国では2011年末までの10年間で消費者物価指数(CPI)が27%上昇したのに対し、衣
料品の価格は4%下落している。

 世界各地の工場の労働条件を監視している米ワシントンの団体ワーカー・ライツ・コ
ンソーシアム(WRC)のエグゼクティブディレクターを務めるスコット・ノバ氏は次のよ
うに述べている。

 「企業が製品を安価に調達する必要性と労働者の権利を守る義務との間には、このよ
うに大きな矛盾がある。労働慣行の抜本的な変更と製品価格の引き下げを同時に実現す
ることはできない」
しかしウォルマートのデューク氏はニューヨークの講演で、価格の引き下げと工場の安
全性向上は両立すると述べた。「高い安全性を確保した上で操業する工場でなければ、
当社はその工場から製品を調達しないし、価格についても話し合わない」

 だが、ウォルマートの製品は火事に見舞われたタズリーン工場で製造されていた。同
社は数カ月前に同工場での製造認可を取り消していたが、別の納入業者がこの工場を下
請けに使っていたのだ。

<偽善の罪を犯した欧米企業>

 ある活動家によれば、ウォルマートのある幹部は2011年にバングラデシュで開かれた
会合で、多国籍企業が安全性向上のために投資をするという計画に対し、先頭に立って
反対したという。これについて同社は、この活動家の指摘は発言の前後の文脈を無視し
たものだと反論した上で、製造原価には安全基準を満たす費用も含まれると認識してい
ると述べている。

 ダッカに本拠地を構える民間シンクタンク、政策対話センター(CPD)でエグゼクティ
ブディレクターを務めるムスタフィズル・ラーマン氏は、欧米の小売業者は「偽善」の
罪を犯しているが、タズリーン工場の火事を受けてこれまでより気をつけるようになる
だろうと述べている。

 「表で注文を受ける工場は基準を守っているが、その裏には基準を守らない下請け業
者がいる・・・欧米のバイヤーはこの状況について見て見ぬふりをしてきた」

 マンチェスター大学のハリド・ナドビ上級講師によれば、企業側が立ち上げた工場監
査制度は、規制を受けていないため有効ではない。「監査担当者を監督する人がいない
・・・監査の前に従業員が指導を受けているという話も聞いたことがある」

 また、自分たちで作ったルールであるため、仮にこれを破っても多国籍企業は法的な
責任を問われないし、罰金などを払う義務にも直面しない。

 「カルバン・クライン」や「トミー・フィルヒガー」のメーカーで、2010年に火事に
なった工場のオーナーから製品を調達していた米国企業フィリップス・ヴァン・ヒュー
ゼン(PVH)は2012年3月、安全性についての責任をPVHに問えるという画期的な内容の覚
書を労働組合などと交わした。

しかし、労働組合などがどんな権限を持つのか明確でないため、この覚書への参加を見
送った小売業者もあった。

 米国の製造業者と小売業者が参加する業界団体アメリカン・アパレル・フットウエア
協会(AAFA)の最高責任者、ケビン・バーク氏はこう語る。「人が亡くなっている工場
から製品を調達していたら、顧客は我々の製品を買ってくれなくなる。それが我々のペ
ナルティーだ」

 「もしバングラデシュが我々に供給する製品を作り続けたいのであれば、彼らが大が
かりな改革を実行する必要がある」

 国際労働機関(ILO)は、ベトナムなどで成功を収めている工場改善プログラムの実行
について話し合いを行っている。だがILOの担当者らによれば、まずバングラデシュ側が
労働者の権利を認めることにもっと努力する必要があるという。

<外国企業がもっと高値で買えば済むが・・・>

 CPDのラーマン氏は、政府は衣料品業界の監督を強化すべきであり、これまであまり強
制されてこなかったルールでも、それに明らかに違反した場合には「一切容赦しない」
という明確なシグナルを送るべきだと話している。

 だが欧米の活動家たちは、答えは買い手の外国企業の側にあると見ている。外国企業
がもっと高い価格で製品を購入すれば、このような災害につながるプレッシャーを取り
除くことができる、というわけだ。価格を引き上げるとなれば、倹約を旨とするウォル
マートなどの企業はいくつもの難しい問題に直面することになる。

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